賤民にされた人びと

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本書は「被差別民とはなにか」の続編として編まれた。
副題が「非常民の民俗世界」となっているように、被差別民・非定住民を取り上げた論集である。
山伏、山人、女性の漂泊者、唱門師、猿回し、獅子舞、山荘大夫、…etc.
蔑まれながら、ある種の特権を保証されていた集団の起源と盛衰について述べられた論集で、今でも柳田国男の論考を越える知見のないテーマもあり、民俗学の奥深さを知らされる。

核家族で国勢調査によりすっかり捕捉されてしまっている今日の我々からみると、謎とロマンに満ちた未知の世界だ。
といっても、今日の行事や儀式の中に、根強く踏襲されている慣習があり、そのルーツを探ることは、日本民族の起源にまで迫るスリルがある。

「桂女由来記」では、権力の中枢に接近した桂女の、興隆と衰亡について述べられている。
消えていった桂女を、「中世の後姿」として哀惜する柳田国男の思いが伝わってくるようだ。

消え去った民俗を、その痕跡を訪ね歩くことによって、わずかに細い糸をたぐりよせるようにして論究する。
民俗学の手法は、転変極まりない今日では、あまりに心細い。
それゆえに想像力を限りなく刺激される。

「小野於通」は吉川英治の「宮本武蔵」に登場する美女であるが、そのお通伝説を、小野小町とも対照させて、小野氏の伝道者としての役割にからめて説かれている。

『破戒』を評す、という島崎藤村の小説について述べた一文では、柳田国男が差別というものにそれほど強い関心を持っていなかったように思われた。

民俗学に目覚めると、旅は2倍3倍と楽しくなる。
少年老い易く学成り難し、を痛切に感じさせるのは他の分野の学問と同様であるが、我々の忘れやすさに絶望するのは民俗学をおいてほかにないように思う。


※ 賤民にされた人びと 非常民の民俗世界  柳田国男 著
                   河出書房新社(’17.5)

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この記事へのコメント

ワトソン
2020年01月03日 22:06
私は、ジプシーについて何も知らないことに気が付き、先月少しばかり調べました。
ジプシーは、ヨーロッパに15世紀ころ現れたインドからの放浪の民、被差別民、移動生活者、などで定義は定かではない。よって、公式の統計では少数だが、推定ではヨーロッパの人口の1%内外。ルーマニアなど東欧ではでは5~10%程度。スペインでは2%だが、フラメンコは彼らの文化に根ざす。ジプシーはイギリスでの呼称で、ツィゴイナー(独)、ジタン(仏)、ヒターノ(スペイン)などと呼ばれる。研究が始まったのは、18世紀後半からで、定義があいまいなことなどから道半ば。私も深入りはやめました。