永井潔アトリエ館にて

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今季一番の冷え込みか、と思われる氷雨降る日。
永井潔アトリエ館を訪ねた。
最寄りの平和台駅で友人らと待ち合わせた。
地上に出ると、こちらはちらちらと雪が舞っていた。
タクシーを待つ間の寒さを考えて、歩いて行くことにする。

住宅地の中に片流れ屋根の白っぽい建物が見えてきた。
それが永井潔アトリエ館だった。
永井潔は二兎社を主催する劇作家・永井愛の父君、画家である。
永井愛は私たちの高校時代の同期で、コンスタントに作品を発表し続け、活躍目覚ましいものがあった。
如月小春、木野花、渡辺えり子らと比べると派手さはないが、練り上げられた台詞劇は完成度が高く、ずっと注目してきた。

狭い階段を上ると生前アトリエだったという部屋が展示室になっていた。
北側が全面ガラス窓になっており、穏やかな自然光が部屋を満たしている。
「絵描きの一人娘」という企画展だった。
たった一人の娘に対する愛情がひしひしと伝わってくる作品ばかりであった。
子猫を抱いた赤いセーターの少女が微笑んでいる。
オルガンを弾く少女の表情は真剣そのものだ。
長じて着物姿の愛さんを描いた作品も何点かあった。
画家は理論に導かれて描く傾向にあったようだ。
人物を浮かび上がらせるために、人知れぬ工夫があったことだろう。
筆触の、ラフなタッチに久々、油彩の魅力を思い出した。

土曜日だけの開館だが、訪れる人とスタッフで館内はにぎやかだった。
私たちは小豆玄米ご飯のランチを頂きながら、近況を語り合った。
芸術家父娘の真摯な創作欲が隅々まで行き渡ったような部屋は居心地がよく、静かな時間が流れていった。

アトリエ館を辞す頃には、雪は雨に変わっていた。




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マッサージチェアで肩こりをほぐす

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肩こりがひどい。
当ホームにマッサージ・チェアが設置されているので、スタッフに使い方を教えてもらい、試してみました。
人間の手による施術がよいのは勿論ですが、以前、「もみ返し」を経験して懲りたことがありました。
頸椎周囲の筋肉、腰の筋肉を揉みほぐすこちらの機械を、10分ほど作動してみました。
特に肩こりには有効だと思いました。

美容院などで、「凝ってるねえ」と言われる私の肩ですが、運動不足や偏った使い方のせいでしょう。
マッサージ・チェアが置かれているのは地下1階。
といっても斜面に建つ、建物の地下からは、街の景色が一望され、開放的なリラックスできる空間になっています。
こちらで、ヨガの講習が一カ月に2回開かれています。
同じフロアに男女の浴室があり、まだ入居者の少ない現在、ほとんど独占状態で使っています。

ところで、有料老人ホームに「住宅型」と「介護付き」があることはご存じだと思います。
当ホームは住宅型なので、高齢でも元気な方が多く、食事その他のサービスのついたマンションといった趣です。
将来、フル介護が必要になった時は、同じグループの介護付きホームに移ることができると確約を得ています。
その際、追加料金が発生しないこと、サービスが低下しないことを、確認する必要があります。
ひとことで有料老人ホームといっても、ホーム独自のサービスや料金体系など、微妙に違うので、契約前にきっちり調べておくべきでしょう。
また交通の便や、立地する自治体の福祉行政、都市の文化的インフラに目配りしておくことも大事です。

こちらではまだ通勤されておられる現役の方もいるくらいですから、社会とのつながりを維持できる「都市型」の利点を生かすことができます。
同時に眺望の良さとの両立がこのホームの最大の魅力だと思います。
ただ坂道が多いので、まだ足に自信のあるうちの入居がベストだと痛感しています。
(体験入居をして周囲を歩いてみるのが良いのではないでしょうか)



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地下1階でも明るい外光が差し込みます


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正面右手に男子の浴室、女子の浴室は写真手前にあります。
毎月、特別湯の日があります。
1月は”松”でした。少し甘い香りがします。
ほとんどの入所者は部屋の内風呂を利用しているようです。

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浴室のある地下1階のテーマは、なぜか孔雀


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エレベーターホールの生花が新しくなっていました     ’20.1.13

「応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱」を読んで

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高い評価を得ていた本書を、ようやく読み終えた。
「ようやく」というのは、登場人物があまりに多く、その人物が「節操のない」離合集散を繰り返すので、一読して人間関係がすぐ理解できるというものではなかったからだ。
歴史小説なら、各人の人間性が浮かび上がってくるはずだ。
そこが歴史を記述する難しさだということを改めて考えさせられた。
私たちが現在の歴史観に少なからず拘束されている以上、歴史的視点の客観性を担保するためにどのような方法をとることができるのだろうか…

応仁の乱は、戦国時代の幕を開けた、という意味でも、京の街を焼け野原にしたという事実からも、特筆すべき大乱なのだが、今ひとつ明快な図式化ができない。
戦乱が起これば、勝者があり、敗者があるはずだ、と私たちは考える。
歴史的必然性はどちらに味方するのだろうか…、と。
巻頭で著者は、内藤湖南の「応仁の乱」評価を挙げる一方、マルクス主義的な進歩史観が世を風靡していた時代の言説を紹介している。
予定調和的な歴史観には革命思想への肩入れがある。

単なる歴史ファンは、歴史の中に人間をみたいと思う。
そしてそれは決して誤った欲望でもなく、学問的研究から遠く離れたアプローチでもないだろう。
著者は、サラエボ事件を発端としてヨーロッパ全域に戦火を拡大し、塹壕戦に明け暮れ膠着状態に陥った第一次世界大戦との類似点に着目している。
戦争の不毛性に気づくのは後知恵であろう。

本書は、室町時代を生きた興福寺の二人の僧侶の日記を中心に史料を読み解き、具体性を重んじて記述された。
具体性が煩雑さを増しているのは否めないけれど。

強大な権力の不在(弱体化した室町幕府)が大乱を招いたのは事実だろう。
「旧支配層の没落と新興勢力の台頭」というステレオタイプの抽象的記述だけでは、歴史理解を助けてくれない。
もっと生々しい息遣いが歴史の彼方から蘇ってくるためには、私たち自身が当今の現実に向き合う必要があるのは言うまでもないが。
戦争そのものよりも兵站を、戦略・戦術よりも領国経営がいかになされたか、を歴史から学ぶ必要がある。

新書のサイズでよくこれだけの内容を盛り込めたものだと思う。


※ 応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱  呉座勇一 著
                   中公新書(’16.10) 

溝口神社へ初詣

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よく晴れた昼下がり、ホームのお仲間とタクシーに分乗して、溝口神社に向かいました。
ホームのスタッフが企画したイベント・初詣です。

大鳥居は大山街道に面し、石畳の参道が続いています。
私たちは本殿脇の駐車場から入りました。

二礼二拍手一礼。
鎮守の森は周囲の住宅に浸食されて、わずかに「親楠」がその名残を留めています。
溝口村の鎮守は明治維新の神仏分離後、伊勢より御分霊を迎え、天照皇大神を祭神としました。

天照皇大神に因み、女性神の象徴として、お多福の大きな面が設置されていました。
霊力より、福笑いを思い起こさせ、笑う門に福を呼び込もうという庶民の知恵を感じます。
境内にはテントが張られ、アイデアいっぱいの、それはたくさんのお守りが並んでいました。

無病息災と人の和を祈願しました。




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親楠 推定樹齢300年
この楠の実が境内に散り、次の世代が育ったことで「親楠」と呼ばれているようです。
子授け、家内安全を司る御神木。

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京都の夏を思い出しました。
茅の輪くぐりは「夏越の祓」で行われるものとばかり思っていましたが、「年越の祓」としても行われることを知りました。
(二つの神事を合わせて「大祓」と呼ぶそうです)
疫病の流行る夏と同様に、厄払いと無病息災を祈願する儀式です。
神拝詞(となえことば)を唱えながら、8の字にめぐります。
お百度めぐりもそうですが、私たちの祖先はそのような行為によって祈り、心を鎮めたのでしょう。

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カフェで小休止                    ’20.1.9
お菓子は別腹と言い訳しながら…




松の内が明けて 桜が春を連れてきました

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すっかりお正月気分も抜けて日常にもどったようです。
一般に松の内とは松飾りや門松を立てておく間のこと、関東では7日、関西では15日とか。
常盤木の松に神様が降臨し、滞在する間を「松の内」と称するのですね。

ホームに越してきてからは実家と様子が違うので、「ハレ」の日と「ケ」の日の境界があいまいになりました。
入所者の大半がリタイアされているので、当然といえば当然ですが。
一方、ホームの方は休み明けの月曜日から、ガラス拭きと床のワックスがけの業者が入り、新たな入居者獲得のための臨戦態勢に入った?もよう…

ロビーに飾られた花は、啓翁桜。
山形よりの到来物だそうです。
いちはやく春を告げてくれる繊細な花の姿に心が和みます。
ケイオウザクラは、中国系のミザクラが台木になって生まれた品種だそうです。
出荷時期に合わせて12月のうちに枝を切り、寒さにあてた後、温室に入れて人工的に春を体験させる。
何とも手間をかけて、春を届けてくれたのです。

極度の悪心に襲われ最悪の年末を過ごすことになった筆者も、前の主治医に書いてもらった紹介状を手に、こちらの大学病院へはじめて通院することになりました。
血液検査室で、こんなに混む日に初診とは運が悪いですね、と言われました。
何と採血待ちだけで1時間!
帰る頃にはちょうど雨も上がり、便数の少ないバスにも待たずに乗ることができました。
これが吉兆となるのかどうか。
世の中は不穏なことばかりのように感じられます。
それでも、個人のささやかな努力などいかほどのものでもない、とは言い切れないでしょう。




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1月2日昼のお雑煮は清汁 
お節は、合鴨スモーク、紅白蒲鉾、栗きんとん、鱒西京焼き、田作り、昆布巻き、人参ねじり梅
小柱がたっぷり入った炊き込みご飯も。

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1月3日お昼のメニューは海老といくらのちらし寿司、ふろふき大根、茶碗蒸し
かわいいデザートに、料理長の女性的な心遣いを感じます

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静かな昼下がり                 ’20.1.8
皆が集まって賑やかな朝会では、俄然張り切って歌い出すオカメインコのマルチャンもお昼寝の時間のようです。

賤民にされた人びと

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本書は「被差別民とはなにか」の続編として編まれた。
副題が「非常民の民俗世界」となっているように、被差別民・非定住民を取り上げた論集である。
山伏、山人、女性の漂泊者、唱門師、猿回し、獅子舞、山荘大夫、…etc.
蔑まれながら、ある種の特権を保証されていた集団の起源と盛衰について述べられた論集で、今でも柳田国男の論考を越える知見のないテーマもあり、民俗学の奥深さを知らされる。

核家族で国勢調査によりすっかり捕捉されてしまっている今日の我々からみると、謎とロマンに満ちた未知の世界だ。
といっても、今日の行事や儀式の中に、根強く踏襲されている慣習があり、そのルーツを探ることは、日本民族の起源にまで迫るスリルがある。

「桂女由来記」では、権力の中枢に接近した桂女の、興隆と衰亡について述べられている。
消えていった桂女を、「中世の後姿」として哀惜する柳田国男の思いが伝わってくるようだ。

消え去った民俗を、その痕跡を訪ね歩くことによって、わずかに細い糸をたぐりよせるようにして論究する。
民俗学の手法は、転変極まりない今日では、あまりに心細い。
それゆえに想像力を限りなく刺激される。

「小野於通」は吉川英治の「宮本武蔵」に登場する美女であるが、そのお通伝説を、小野小町とも対照させて、小野氏の伝道者としての役割にからめて説かれている。

『破戒』を評す、という島崎藤村の小説について述べた一文では、柳田国男が差別というものにそれほど強い関心を持っていなかったように思われた。

民俗学に目覚めると、旅は2倍3倍と楽しくなる。
少年老い易く学成り難し、を痛切に感じさせるのは他の分野の学問と同様であるが、我々の忘れやすさに絶望するのは民俗学をおいてほかにないように思う。


※ 賤民にされた人びと 非常民の民俗世界  柳田国男 著
                   河出書房新社(’17.5)

2020年 明けましておめでとうございます

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あけましておめでとうございます。
ブロガーの皆さま、当ページをお訪ねくださった皆さま
本年もどうぞ宜しくお願い致します。

おかげさまで、よく晴れた、お正月らしい穏やかな元旦を迎えることができました。
朝一番、お隣のお稲荷さんの祠に初詣しました。
ホームが建つ前は、山林だったところで、そこに鎮座していた稲荷神を建物の傍らに移されたそうです。
今ではホームの家神様のようです。

神社の中では最多を誇る稲荷神に、五穀豊穣と平和を祈願しました。
(日本の食糧需給率が上がり、食材の廃棄が無くなりますように)



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10時に紅白の上よ饅頭と桜湯をいただきました


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お節と京風雑煮                      ’20.1.1 
白みそ仕立てのお雑煮は、関東風?にあっさりとつくられていて、美味しい。
私の知っている京都のお雑煮は亀甲に切ったお芋と人参をお椀の底に敷いて、丸餅を置き、こってりと甘い白みそ仕立ての汁を張ったものでした。
お餅も小さな四角い切り餅、くし型に切られた蕪が美味しい。
お節は、棒鱈、有頭海老、黒豆、数の子、金柑甘露煮、紅白なます。
扇型の物相で型抜きされたお赤飯がついていました。
金粉の入った伏見のお酒を頂き、ぽかぽかした日差しの下でほろ酔い気分。
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大晦日の賑わいを予想していたのですが、二子玉川のデパートでは、行き過ぎる人はあっても、あまり買い物をする姿は見かけません。
多分、デパ地下は混雑していたのでしょう。

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松一本をアレンジした飾りつけがお正月らしい。 玉川高島屋にて

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ホームの門松


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ロビーのアレンジ 館内を流れるBGMは、雅楽や筝曲の「春の海」、端唄などで、気分を盛り上げています。              ’19.12.31

めまい その後

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メニエール病について、体験談を他人事のように聞いてから、10日もしないうちに、今度は私の方が発症。
ストレス、寝不足などが原因で、夜勤のスタッフに多いとか。
周囲に気を遣うあまり、気疲れしがちな神経質な人に多いとも。
意識していなかったけれど、ホームでの生活は、体力的に楽な分、人付き合いに神経を遣っているのかもしれない。

悪心とふらつきが長く尾を引いて、2週間は気分の悪い不安な日が続いた。
ようやくふだん通りの生活に戻ったのは、発症後4週間近く経ってからだ。
今朝、朝会のラジオ体操に復帰。
病後はじめてダイニングに下りて食事をした日から、スタッフが何かと気を配ってくれた。
同じ入居者とのおしゃべりが長く続かないように配慮してくれたのだ。

家族だったら、苦虫を噛み潰したような顔をして平気でいられるのに、他人には苦しい顔は見せられない。
実家に帰った時
「戻ってきたら治っちゃうよ」と言ってくれる人がいた。
臥せっている時はいろいろ考えた。
「終の棲家」などと大げさに考えず、別荘で暮らすように、気楽に過ごすのがいいかもしれない。
私を含め世間一般が「老人ホーム」という言葉に縛られているように思う。
確かに高額の家賃を支払うことになるが、メイドや執事、看護師、料理人から掃除婦まで、専門家を共同で雇うという考え方をすれば、却ってリーズナブルな気もする。

とはいえ、労働集約的な産業なので、すでに大変な人手不足に陥っている。
当ホームのスタッフの質が高いこと、植栽やインテリアなどのセンス、都市型として利便性の高い立地、眺望の良さ、美味しい料理、…と好条件がそろっているので、ホーム長から
「○○さんは良いところに入居しましたよ」
と言われて、自分の選択が間違っていなかったと、密かに意を強くした。
現在、社長に昇進したホーム長は他の施設についてもよく知っているので、手前みそながら、その言葉は公平で正直なものと思う。

老人ホームに入居することは、老人ホームに投資するということだ。
当ホームが順調に育っていくこと祈りたい。

さて、めまいの原因だが、脳であればCTスキャンだけでなくMRIの検査が必要だが、耳鼻科の医師は、耳の方を疑っているので当座MRIの必要なし、と妙に自信をもって言う。
ご大層な病名はつけられても、治療法がないばかりか、原因すら特定できない病気が何と多いことだろう。




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12月26日 機械捏ねですが、1升のもち米を蒸し、入居者も手伝っての分割作業


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12月28日 各階のエレベーターホールに正月を迎えるアレンジメントが飾られました


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入居者Y氏が「さらりと」書いてくださったという毛筆にうっとり…

ジェイン・オースティンの読書会

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ジェイン・オースティンの長編小説6作を読みすすめてゆく読書会について綴られた書物である。
読書会のメンバー6名は、ジェイン・オースティンの作品の中に登場する人物を批評しながら、各人の生活や意見も語られる。
一種のメタノベルと言っていいかもしれない。
ジェイン・オースティンに捧げるオマージュであることは確かだ。

小説の重要なテーマのひとつがラブロマンスであることに反論はないだろう。
しかし「恋愛」以上に「結婚」が主題となる小説に果たして読者は魅力を感じるだろうか。
古い文庫本「高慢と偏見」を書棚からすぐに見つけ出せる私も、ジェイン・オースティンとはほとんど無縁に過ごしてきたように思う。
恋愛は非日常のドラマだが、結婚は現実そのものであり日常を離れることができない。

巻末に6作品のあらすじと、「さまざまな反応」として同時代から現代の作家までのジェイン・オースティン評を付しているのが興味深い。

ヴァージニア・ウルフの言葉が特に印象深い。

1800年ごろにこういう女性がいたのです。つまり憎悪も、恨みも、恐れも、抗議も、説教もこめずに小説を書いた女性がいたのです。これはシェイクスピアの創作態度と同じだと思います。
・・・・・・

ヘンリー・ジェイムズは次のように喚起力に富んだ表現によって、オースティンを批評している。

ジェイン・オースティンが死後これほどの人気を得た鍵は、彼女の腕前の並外れた優雅さにあるが、実はこの優雅さは、無意識から生まれた優雅さである。たとえばたぶんこんな感じだ。彼女は創作に行き詰まったり当惑したりすると創作を中断し、刺繍仕事を始めて空想に耽る。そしてその編み目を落としたような部分が、想像力豊かな名人の腕前として称賛されるのである。

シャーロット・ブロンテは、偉大な作家ではあるが詩人ではない、という意見に対して、
詩心を持たない偉大な作家なんているのでしょうか?
と、反論している。
一方、マーク・トウェインやジョゼフ・コンラッドなどは、オースティンに敵意でもあるのかというくらいのマイナス評価を下している。

ジェイン・オースティンには確かに冷淡なところがあるかもしれない。
冷静、冷淡、共感を求めない客観描写が、小説の目利き、批評家や文学者たちの知性を魅了する、という見方が一般的なものだろう。
同時代に起きたフランス革命すら触れることなく、19cイングランドの田舎の中流階級を描いた。
特に女性の結婚問題に焦点をあてて進行する物語の普遍性に、今の読者も驚かざるを得ない。

オースティンの次の言葉がすべてを語っているように思われる。
「君の心の庭に忍耐を植えよ、その草は苦くともその実は甘い」

本書は、読書会の効用についても書かれた書物だ。
オースティンにならい、読書会のメンバーもハッピーエンドを迎える。


※ ジェイン・オースティンの読書会 カレン・ジョイ・ファウラー著
                  ちくま文庫(’13.11)

住宅型有料老人ホームとは

ホーム(住宅型有料老人ホーム)の看護師が、血液検査、CTスキャン画像(CD)などのデータ資料をまとめクリアファイルに入れて、届けてくれました。
明後日、ホーム近くの医療機関への紹介状を書いてもらうため、通院することになっているからです。

住宅型有料老人ホームと介護付き有料老人ホームはどこが違うのでしょうか。
めまいと吐き気で、一日だけでしたが緊急入院。その後のホームの対応から、その違いを入居8か月目にして実地で体験することになりました。
以下はそのレポートです。

症状が出たのは、起床後のことで、食事がとれないばかりか水一滴も飲めなくなってしまいました。
翌日も同じ症状が続いたので、まずは点滴を受けるために近くの病院に行くことを、看護師が提案。
その時、脳外科を受診した方がいいのじゃないか、というホーム長の意見を入れて、心配を払拭する意味でも脳神経外科へ行くことになりました。
激しい吐き気が間断なく襲ってくるので、タクシーの後部座席に横になって病院に向かいました。
病院に着いてからはストレッチャーで移動。
CTスキャンを撮り、ストレッチャーに寝たまましばらく待機していました。
めまいが怖いので、ずっと目を閉じたまま。
ずっとホームの看護師がついていてくれたので安心でした。

「もう寝たきりですよ」
「寝たきりの方が楽ですよ」
「スポーツは絶対してはいけませんよ」

周囲からはそんな声が聞こえてきます。
そのうち、病院の看護師でしょうか。
「検査を受けてから長く待たされるのは、よい兆候ですよ」
と、ホームの看護師に告げるのが聞こえました。

その間、生理用食塩水の点滴が続いていました。
点滴が終わらないので、その日はとりあえず入院することになりました。
手術着のままの医師に
脳ではないので、退院後は耳鼻科を受診するようにと言われました。

インフルエンザが猛威をふるっていたので、吐き気は一向に治まらなかったのですが、長居は無用とばかり、翌日退院することにしました。
この脳神経外科病院は緊急搬送される患者を拒否することないので、患者の出入りは激しく、看護師も走るようにして看護にあたっていました。

翌日、迎えに来てくれた看護師とホームの車で帰参しました。
まず看護師が、寝ている私の都合の良いようにと、念のためポータブルトイレをベッドの際に据え、小道具に手が届きやすいようにレイアウトしてくれました。
ガーグルベースやストロー付きコップ、おまけにリハビリパンツまで買って来てくれました。
ケアマネージャーが介護保険内で済むようにと、12月のケアプランを作成。
食事は最初の数日は、おかゆ、梅干し、実のない味噌汁、りんごを、横になって摂るのがやっとでした。
この食事は本来部屋で用意することになっているのですが、道具も揃っていないので厨房で作って来てくれました。
バイタルチェック、清拭、掃除、洗濯などは介護保険、買い物はホーム独自のサービスを利用しました。
有料老人ホームとはいえ、住宅型なので居宅介護と全く同じです。
介護付き有料老人ホームと比べて、サービスよりプライバシーが重視され、もしあのまま入院していたら、部屋から持ってきたいものを頼む場合でも、ホーム長立ち合いのもとに入室することになるそうです。
まだ苦しいうちに退院しましたが、ホームの手厚いサポートのおけげで何とか回復しました。

後日、耳鼻科を受診。
三半規管の異常で、なお経過観察を必要とするようです。


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クリスマスの飾りつけ  11月22日