終戦記念日をひかえて 読書日記

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参院選の結果、過半数に達した与党勢力も改憲に必要な議席数2/3を獲得できなかった。
これから野党が切り崩されないことを願うが、正直なところひとまずほっとした。

米中の貿易摩擦、北朝鮮問題、日韓の対立、資源や領土問題、…etc.
過去の世界大戦の勃発を顧みると、戦争になってもおかしくない状況が頻発している。
戦争をはじめる人間はいつも戦争を知らない世代である、という言葉がある。
戦争が不用意な一発の銃声によってはじまり、泥沼化してゆく現実を体験している政治家なら、彼がタカ派であろうと慎重にふるまうはずだ。
戦争体験者がいなくなり、現代史が風化してゆくのをあらゆる手立てを駆使して、阻止しなければならない。

今、80代から90代で元気な高齢者なら、強烈な戦争体験を経ているはずだし、中にはトラウマに悩まされている人もいるかもしれない。
先日、接骨院のリハビリで93歳の女性に隣り合わせた。
山梨の農家に生まれ、米やサツマイモと交換するために着物を持参する人たちのことをよく覚えていた。
農家とはいえ、米を供出させられ、自分たちはふすまの団子を食べていた、という。
母が同年代であることを告げると
「お母さんにはやさしくしてあげてね」という言葉に、体験者ならではの説得力があった。

実際、終戦間近に名古屋の軍需工場で栄養士をしていた母は、空襲と地震(戦争中の事なので秘匿された)を経験している。
故郷の祖母(私には曾祖母)は名古屋に空襲があると聞くたびに、仏壇の前で手を合わせていたという。
帰郷後、祖母に言われたのは
「おまえは、これから好きなように生きていけばよい」の一言だったそうだ。
それほど過酷な体験だったことは、私もよく話を聞かされるので、多少とも追体験できそうな気がするのだが、あくまで想像に過ぎない。
一方、亡父は母にほとんど戦争のことを話さなかったという。
墓場まで持ち込まれた無数の真実がある。

「原節子の真実」を読んだ。
同じ著者による、銀座の伝説的バーのマダムを描いた「おそめ」を読んだことがあった。
「永遠の処女」と呼ばれたスーパースターの評伝も、戦争あるいは男社会、という切り口で読むと意義深い。
戦意高揚に駆り出された映画人に、総力戦をたたかう時代にあって、どうような選択が可能だっただろか。
あなたたちには分からない。あの時代を…
という母の言葉がいつも厚い障壁となって、私の歴史理解を妨げる。

遅まきながら松本清張の「日本の黒い霧」を読む。
敗戦後GHQ支配下で様々な怪事件が連続して起きている。
松本史観は、GHQ内部の勢力争いにリンクさせて、それらの事件を読み解こうとしている。
膨大な資料を収集し、一般に陰謀史観と呼ばれる深読みを批判する向きもないではない。
「革命を売る男・伊藤律」では、実際、伊藤律が中国より帰還して、作家の錯誤が指摘されることになった。
事実は多面体をなし、観察者は複眼思考を必要とする。
一方、将棋の盤面を複雑に考えすぎてしまうのも、素人がおちいりやすい陥穽だろう。
今を生きる我々には、今の現状が理解できないということがある。

戦争が何も解決しないことは歴史が示す通りだ。
(第二次世界大戦の勝者は、アメリカだけだった)


※ 原節子の真実  石井妙子 著  新潮文庫(’19.1)



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戦争は女の顔をしていない  
  スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチ 著  
  岩波現代文庫(’16.2)
ソ連では第二次世界大戦で、看護婦や軍医だけでなく敵を殺す兵員として、100万人以上の女性が従軍したという。パルチザン部隊や非合法の抵抗運動に参加した女性たちもいた。
彼女たちの聞き書き集。
「もっと早く、戦後すぐの頃に訊ねて回って書き取るべきだったの」
生存者がいるうちに本書が書かれたことに感謝したい。

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日本の黒い霧(上)(下)  松本清張 著  文春文庫(’04.12)


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この記事へのコメント

ワトソン
2019年07月29日 09:33
私の亡父もまったく戦争のことは話しませんでした。祖母から中国で戦っていた事を聞いたくらいです。ところが、私が高校生の時、ぽろっと「ギミ サム ウォーター」を上官から教えられたと、言いました。Give me some water ですね。捕虜になった時のためでしょう。聞いたとき驚きました。
物事は多角的に見なければいけないと、心に留めていますが、
「事実は多面体」そのものズバリの言葉ですね。
2019年09月17日 17:40
ワトソンさん、ありがとうございます。
言葉が理解できないのは致命的。
絶滅収容所でまず最初に命を落とすのは、ドイツ語を理解できない人たちだった、という話を思い出しました。