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zoom RSS 明治維新のカギは奄美の砂糖にあり

<<   作成日時 : 2017/09/04 21:33   >>

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前回の読書会でIさんが紹介してくれた本である。
琉球王朝の流れをひく著者のファミリーヒストリーに触れながら、明治維新の原動力となった薩摩藩の資金源について述べている。

「黒糖地獄」という言葉があるそうだ。
薩摩藩は、奄美のサトウキビ生産から激しい収奪を行った。
藩政に寄与したものには郷士格を与えた。
飴と鞭作戦で、砂糖増産をはかった結果
藩財政への砂糖の貢献度は司馬遼太郎によれば5割、研究者によっては8割にまで達したという。
琉球を介した密貿易による収益も無視できなかったに違いないが、砂糖の占める割合の大きさに驚く。

NHK大河ドラマ「篤姫」は、この件について一切触れていないという。
幕末期、列強との攻防に供え、軍艦製造など軍資金となったのがこの財源であった。
ご存じのように「生麦事件」を起こした薩摩藩は英国より多額の賠償金を請求され、薩英戦争へ突入した。
一方、欧米の科学技術の水準の高さを思い知らされた薩摩藩は、軍事技術はじめ先端学術を学ばせるため15人の留学生を欧州へ送り込んでいる。
その費用が現在の貨幣価値でいうと何と34億円。
それもまた奄美の砂糖あったればこそという。

現在、薩摩藩の財政の入りと出を正確に知ることは困難だという。
大山綱良県令が幕末期に関係文書・記録を焼毀しているため、藩財政を子細に検討することは不可能となり、状況証拠を積み重ねてゆくしかないという。

為政者側、或いは勝者の語る歴史は正史として残り、搾取された人民の生活が一向にみえてこないことに歴史学の限界を感じる。
まさに状況証拠こそ、黒糖地獄にあえいだ人々の生活を浮かび上がらせることになろう。

話はかわるが、先述した司馬遼太郎が、統帥権について述べた一冊の古本を見つけていている。
統帥権は三権分立を規定した明治憲法の外にあり、平時・戦時を問わず三権から独立していることを明記した本である。
この「統帥綱領・統帥参考」という本は昭和37年に復刻されたものだが、旧陸軍の正規将校を中心とした親睦団体・偕行社によって発刊されている。
原本は敗戦の時に一切焼却されたといわれていたものだ。

一部の尊大な切れ者たちが強引に国政を動かそうとした歴史の一端もまた闇に埋もれようとしていたのだ。
言うまでもなく教科書的な知識、マスメディアが喧伝する情報だけが歴史を語るものではない。
大文字の歴史の行間を読むために必須なのは、厳密な歴史学以前に人間存在に対する深い洞察力かもしれない。

因みに奄美を薩摩藩が領有するようになったのは慶長14年(1609)
薩摩藩の琉球征伐により分割された結果である。
それまでの奄美は琉球文化圏に属していて、文永3年(1266)から343年間は行政上も沖縄に所属していた。
奄美侵攻について知る人は私も含めてあまり多くはないのではなかろうか。
先の終戦以上に、奄美の人々は深く傷つき、その傷は未だ癒えていないという。



※ 明治維新のカギは奄美の砂糖にあり  大江修造 著  アスキー新書(’10.3)



画像 「文藝春秋」で読む 戦後70年
  第一巻 終戦から高度成長期まで (’15.7)

  本文中の司馬遼太郎の言はこちらの本より引用しました

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
NHKの篤姫はほとんど毎週見ていましたが、そうですね、薩摩の琉球支配については、まったく触れられていませんでした。当時は私も知りませんでしたが。
薩摩が琉球を経由した、中国や東南アジアとの貿易で蓄財していたことは知っていましたが、奄美大島については知りません。
江戸から明治維新が現在の私の研究範囲なので、さっそく本を手配しました。新品は2万円で出品されていました。もちろん数百円の古本にしました。

ワトソン
2017/09/06 20:48
ワトソンさん、ありがとうございます。
最近、歴史の表舞台に登場する権力者の動きだけを追う歴史に特に強い違和感を覚えるようになりました。
焼き捨てられた文書がいかに多いか、ということを考えます。
旅するのも主に歴史を遡行する楽しみからです。
不勉強ゆえ、見えないものがはるかに多く、歴史の狭間に消えていった人々に想像力が届かないのがもどかしいです。

2017/09/10 22:08

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