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zoom RSS 日本人はどう住まうべきか? 養老孟司・隈研吾 著

<<   作成日時 : 2017/09/02 22:06   >>

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「バカの壁」の著者・養老孟司と「負ける建築」の著者・隈研吾の対談集。
終の棲家ということを考えるようになって偶然手にした本書
世の流れや常識、数々の指数や基準値に疑問符?を突きつける。
いかにも本当らしく権威づけて語られる理論も、その土台そのものが危うければたちまち無意味と成り果てる。

あたかも絶対であるかのように振舞う建築基準も、建物の立地する土地の性質については問わない。
活断層上であろうが液状化する危険性があろうが、安定した岩盤上と同じ建築基準を適用するというのはどうなんだろう。
自然の脅威の前には、人間の姑息な抵抗などひとたまりもない。
3.11で経験したばかりだ。

そこで隈研吾は「だましだまし」の姿勢をとることを提案している。
そのもとには現場主義がある。
おそらく江戸時代までの日本人はこの「だましだまし」の手法で共同体の秩序を守り、時に荒ぶる自然とも何とか折り合いをつけてサバイバルしてきたのではないだろうか…
決して対峙したり、自然を支配しようとはしなかったと思う。
自然を畏れていた。その畏れが人間の謙虚さのおおもとにあっただろう。
だから「負ける」ことはネガティブな姿勢ではなく、リスクを最小限にとどめてやり過ごす、生きるための大人の知恵ともいえる。

絶対という一律の価値基準や、驕った人間の万能感や、完全主義などは、一旦条件が変わればたちまちに破綻する。
強くみえたものは、状況によっては一変して最も適応力のない弱さとなる。
法律や政治的主張の正当性はまず疑ってかかるべきだろう。

高層の集合住宅に住んだ経験のないものにとって、マンションやオフィスビルの林立する風景には、いつまでも慣れることができない。
政治とゼネコンが結んで、すでに供給過剰の住宅をつくらずにはいられない経済体質になっていて、違和感をかきたてる風景が出現する。
それでも止めることができないのは、巨大開発によってお金がまわっているからだ。

また本書ではエネルギー消費と経済活動が相関関係にあることに何度か言及し、エコロジカルだと思われている代替エネルギーに疑問を投げかける。
一般にエコロジカルだと思われていることが、熱力学の法則にてらしてみれば、少しもエコロジカルでないことがわかる。

完璧な住み替えなどない。本書を読んで肩の力が抜けた。
人間はもともと定住する動物ではないのだろう。
移住できる体力と気力のあるうちは、行きたいところに出かけ、しばらく住んでみればよいのだと思う。



※ 日本人はどう住まうべきか?  養老孟司・隈研吾 著
                          新潮文庫(’16.1)      

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
完璧な住みかえなど無い、本書を読んで肩の力が・・・
とのことですが、随分力が入っていたのですね。
以下、「人類史のなかの定住革命」西田正規 よりのコピペです。
”人類が定住して、約1万年。しかしそれまでの数百万年の間、人類はただひたすら遊動生活を続けてきたのだった。

 「定住革命」は、不安定な生活から安定した生活への進歩を必ずしも意味しない。

 それは、不快なものや危険なものから「逃げる」という、最も基本的な生存戦略を取ることができなくなったということでもあったのだ。”
現在の地球の人口は70憶人くらいですね。イエスの頃で1億人との推定です。1万年前は?
定住は人口増加による生存戦略だったのでしょう?
ワトソン
2017/09/03 21:18
ワトソンさん、ありがとうございます。
自宅を処分して入居金に充て、老人ホームに移り住む場合、皆さん相当、覚悟を決めて入るとのことでした。
一方、老人ホームに入る際、自宅を処分してしまうのはリスキーだという専門家の忠告を受けたことがあります。
ユーラシア大陸の遊牧民とって、定住を強いられるのはたいへんみじめなことのようです。
移動するのはほとんど人間の本能と言えるでしょう。
旅は、定住する人間の不満を解消する代替行為なのかもしれません。
確かにテリトリーを明確にして棲み分けるというのが、人口過剰時代に入ってからの戦略かもしれませんね。

2017/09/04 19:13
隈研吾さんは好きな建築家の一人で、那珂川町馬頭広重美術館、那須芦野・石の美術館、那須歴史探訪館等々を見て回りました。メーカー主催の講演会を聴講したこともあります。次々にアイディアが出ることに驚きました。
こういうテーマを語るにふさわしい人だと思います。
ウリ坊
2017/09/09 19:37
ウリ坊さん、ありがとうございます。
ウリ坊さんのブログを拝見して「石の美術館」は是非訪ねてみたいと思っていました。
隈研吾さんは文章も巧みで発信力のある建築家ですね。
現場からの提言は説得力があり、建築の矛盾をいかに解決してかたちにしてゆくか、他の分野でも参考になる考え方だと思いました。

2017/09/10 22:14

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