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help リーダーに追加 RSS 「政治と秋刀魚」ジェラルド・カーティス著

<<   作成日時 : 2008/08/28 22:04   >>

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西荻駅の北口へ降りて数分のところに、その下宿屋があった。
閑静な住宅地で、東京女子大の学生の通学路に当たっていて、露地を入るとこじんまりした庭を隔て、三部屋の離れがあった。
カーティスさんの著作を読んで、思いがけず失われた時がよみがえり、懐かしかった。
その頃、服作りを学ぶために休日にK先生のお宅にお邪魔していた。
K先生はよく、カーティスさんがねえ・・・、と話題にしていたものだ。
よく整理された、驚くほど小さなアトリエ(というより仕事場)だったが、K先生はカーティスさんと同じ家に間借りしていたのだ。
著者のカーティスさんはすでに下宿を引き払っていたのだが、四畳半の質素な部屋で漢字文化の豊かさに魅せられて勉強していたその人を想像した。

ジェラルド・カーティスが初来日したのは、1964年、当時三鷹のICU内にあった日本研究センターで日本語を学ぶためだった。
センターで紹介されたのが前述の、家賃月3000円という下宿だった。
日本政治に詳しいコロンビア大学の政治学の教授である。
そして、本書は日本政治について著者が日本語で!書くはじめての本になった。
平易な日本語で、外からの客観的な目で日本の政治が分析されてみると、改めて偏見や思い込みに気づかされ、目から鱗が落ちる。
遅れているとか世界の標準からずれているとか、奇妙で前近代的な習慣として退けられがちな政治手法が、著者の眼を通すと、歴史と精神風土から必然的に生み出された知恵であることに思い至る。
さすがにプラグマティズムのお国柄だ。
底流に、政治は結果よければすべてよし、という現実主義があるように思う。

アメリカのいわゆる知日派を5つの世代に分けると、まず駐日大使であったライシャワーに代表される第1世代がいる。
宣教師の子弟が多いのが特徴だ。
第2世代は、日本文学者として有名なドナルド・キーンやエドウィン・サイデンステッカーなど。
日米開戦の結果、日本語のできる人材が求められ、両者とも米海軍の日本語学校で学びGHQで働いた経験を持っている。
第3世代が、著者の世代であり、第2世代の日本に対する思い入れの熱さに比べると、ドライでクール、客観的と評された。
「世界史に前例がないほど経済的に躍進し、アジアで唯一の民主主義国になっていた」日本に好奇心を持ち、西欧型ではない近代化のモデルを研究した。
第4世代、第5世代になると、多元的で特徴づけは難しいが、第4世代は「日本脅威論」が盛んだった頃の世代で、日本の政治経済システムを世界的な視点からアンフェアだと批判し、クリントン政権の対日政策に大きな影響を及ぼしたという。
第5世代は、第3世代とは逆に、バブルが弾け、機能しなくなった日本の政治経済システムに感心を持った。
最近の知日派は、英語による日本の文献が増え、日本語をあまり読まず、実態調査より理論を重視する傾向にあるという。

第3世代の著者は、選挙を研究テーマに選んだ時、文化人類学者のフィールド・リサーチの手法を使い、恰好の立候補者を紹介してもらうと公私にわたり密着取材を行い、内から日本の政治の実態を観察した。
佐藤首相から20代の歴代首相のうち19人に会ったという。
中選挙区制やねじれ国会が悪者のように言われるが、中選挙区制が日本に相応しい選挙制度であること、アメリカの大統領はねじれ国会が常態であり、議会を説得するために多大な努力を必要とすること。
政治主導のためには、アメリカ並とは言わずとも議員一人あたりの政治スタッフを増強すべきこと。
(お金がかかることなので、その分陣笠代議士の数を減らし、頭数ではない精鋭部隊になって欲しい。因みに日本の国会議員の公設秘書は3名、ヒラリー・クリントンの政治スタッフの数は55人である)
・・・・・・etc.etc.

小泉改革の功罪を冷静に判断し、改革を進めるべき点は進め、聖域なき改革の結果生まれたひずみは是正すべきこと、平明な日本語で書かれた本書に日本人が教えられることは多い。
「リーダーが成功するために一番大事なことは、信用されて希望を与えて、説得する力を持つことである」
当たり前のことであるが、その結論は地道な各論、リアルな政治現場を目の当たりにした上で、ニュートラルな視点が到達したものだ。



※ 政治と秋刀魚  ジェラルド・カーティス著  日経BP社(’08.4)

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは!
名書「菊と刀」以来、外国人の日本論は「○○と▲▲」といった二者対比みたいな視点で書かれることが多いようですが、この本の「政治と秋刀魚」の対比の狙いは何処にありや?ってナゾナゾじゃないんだから自分で読め!って言われそうですね。
外国人に限らず、違う文化野本にある、又はあった人の文化論の面白さは、視点の違いの面白さにつきますね。と同時に、輪の中の人が書いたのでは胡散臭く見える論法が何故か新鮮に見えるという特性もあります。
社内で相手にされなかった施策を外部のお得意様から言ってもらうと、いとも簡単に採用されるという目に何度もあってきた身にすれば、面白がってばかりもいられない現象です。
昭和50年前半までの日本は世界がうらやむ国だったのに、
西欧文化のつまみ食いをしたことで、社会福祉の壊滅、格差の拡大、地域コミュニティの崩壊と見事な凋落ぶり。
氷河期にも生き残った温帯広葉樹林帯で育った日本人には日本人のやり方があることを異文化圏の人の方が見えるというのも当然のことなのかも知れません。
この本、多くのしさを踏むんでいるようですので、購入リストにアップしときます。
midy
2008/08/30 16:26
空様
アメリカの知日派を5世代に分けるのは面白いと思ました。ピューリッツァー受賞作「敗北を抱きしめて」を書いたジョン・ダワーも第5世代で確か日本語を読めなかったと思いますが 日本人の奥様に助けられように記憶しています。冒頭にある西荻窪の記述については 高校生の時に西高に通学するために私も西荻で降りていたので昔を懐かしく思い出しました。
白象
2008/08/31 07:29
midyさん、ありがとうございます。表題は、秋刀魚で生活をあらわし、政治と並べています。日本の定食に慣れ、肉より秋刀魚や鯖が好きだというカーティスさん。 midyさんのご意見ごもっとも!あいつの言うことなら中身も確かめずとも何でも賛成協力したい、という人間がいる一方、どんな正論を聞かされても、シャラクサイという気がしてならない人がいます。言葉ではなく言葉を発する人間に説得力があるかどうか。身近な人間の意見は、おっしゃる通りあまり新鮮味が感じられないのでしょう。 源氏物語を英語完訳したサイデンステッカーでさえ、なかなか日本語で書いた文章にはお目にかかれないようです。本書が日本語で書かれていることにまず敬意を表したい!

2008/08/31 09:50
白象さん、ありがとうございます。
日本語が読めなくても、英文資料が豊富になって、日本研究ができる時代になったということですね。
西荻はちょっぴり懐かしい町です。奇遇ですね。学校群制度が発足したので、私は西高に振られ富士高に通っていました。

2008/08/31 09:59

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