「応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱」を読んで

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高い評価を得ていた本書を、ようやく読み終えた。
「ようやく」というのは、登場人物があまりに多く、その人物が「節操のない」離合集散を繰り返すので、一読して人間関係がすぐ理解できるというものではなかったからだ。
歴史小説なら、各人の人間性が浮かび上がってくるはずだ。
そこが歴史を記述する難しさだということを改めて考えさせられた。
私たちが現在の歴史観に少なからず拘束されている以上、歴史的視点の客観性を担保するためにどのような方法をとることができるのだろうか…

応仁の乱は、戦国時代の幕を開けた、という意味でも、京の街を焼け野原にしたという事実からも、特筆すべき大乱なのだが、今ひとつ明快な図式化ができない。
戦乱が起これば、勝者があり、敗者があるはずだ、と私たちは考える。
歴史的必然性はどちらに味方するのだろうか…、と。
巻頭で著者は、内藤湖南の「応仁の乱」評価を挙げる一方、マルクス主義的な進歩史観が世を風靡していた時代の言説を紹介している。
予定調和的な歴史観には革命思想への肩入れがある。

単なる歴史ファンは、歴史の中に人間をみたいと思う。
そしてそれは決して誤った欲望でもなく、学問的研究から遠く離れたアプローチでもないだろう。
著者は、サラエボ事件を発端としてヨーロッパ全域に戦火を拡大し、塹壕戦に明け暮れ膠着状態に陥った第一次世界大戦との類似点に着目している。
戦争の不毛性に気づくのは後知恵であろう。

本書は、室町時代を生きた興福寺の二人の僧侶の日記を中心に史料を読み解き、具体性を重んじて記述された。
具体性が煩雑さを増しているのは否めないけれど。

強大な権力の不在(弱体化した室町幕府)が大乱を招いたのは事実だろう。
「旧支配層の没落と新興勢力の台頭」というステレオタイプの抽象的記述だけでは、歴史理解を助けてくれない。
もっと生々しい息遣いが歴史の彼方から蘇ってくるためには、私たち自身が当今の現実に向き合う必要があるのは言うまでもないが。
戦争そのものよりも兵站を、戦略・戦術よりも領国経営がいかになされたか、を歴史から学ぶ必要がある。

新書のサイズでよくこれだけの内容を盛り込めたものだと思う。


※ 応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱  呉座勇一 著
                   中公新書(’16.10) 

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この記事へのコメント

omachi
2020年01月14日 17:40
あなたの知らない日本史をどうぞ。
歴史探偵の気分になれるウェブ小説を知ってますか。 グーグルやスマホで「北円堂の秘密」とネット検索するとヒットし、小一時間で読めます。北円堂は古都奈良・興福寺の八角円堂です。 その1からラストまで無料です。夢殿と同じ八角形の北円堂を知らない人が多いですね。順に読めば歴史の扉が開き感動に包まれます。重複、 既読ならご免なさい。お仕事のリフレッシュや脳トレにも最適です。物語が観光地に絡むと興味が倍増します。平城京遷都を主導した聖武天皇の外祖父が登場します。古代の政治家の小説です。気が向いたらお読み下さいませ。(奈良のはじまりの歴史は面白いです。日本史の要ですね。)

読み通すには一頑張りが必要かも。
読めば日本史の盲点に気付くでしょう。
ネット小説も面白いです。