平成文学とは何だったのか

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この4月まで住んでいた自治体で聴講していた助川幸逸郎先生の最新の著作である。
助川先生の講義は、源氏物語の解釈であり、主催するのが〈21世紀の生き方を「源氏物語」に学ぶ会〉
会名からも分かるように、その講義は、源氏物語の人間関係や感情のあやなどを、今日の読者にもリアルに感じられるように流行語なども使って解説するものだ。時に相当深読みする。
ひいては今日の我々からはかけ離れた王朝人の恋愛譚とはいえ普遍的な真理が浮かび上がってくる。
古典を古色蒼然とした過去の遺物から解放して、今にも通じる読みに変換する助川先生の手際に感心させられる。

今現在
講座の方は宇治十帖に入っている。
宇治十帖は近代文学だというのが助川先生の持論である。
雲上人の雅な恋愛模様には今一つぴんと来ないところもあるが、浮舟の凄まじい苦悩は皮膚感覚的にわかるのだ。
とはいえ、移転後なかなか講座に出席できないのが残念だ。

本書は、古典好き、近代文学好きだが、リアルタイムの小説読みではない私にとって、平成の文学を総括した、読書のための格好のガイドブックになっている。
本が売れないと言われて久しい。
他のメディアとは異なる小説の意義を説き、作家たちの今と未来を占う本書は、時代を映す鏡たる作品にも目配りすべきことを痛感させた。
長大な物語を紡ぐ、筆力に恵まれた小説家も少なくない。
宝の山を探索せずに放置することないように、本書を参照して新しい作家を発掘したい。
対談形式のため、複数の視点に学べ、何より読みやすい。

それにしても本書のタイトルはあまりに無味乾燥で、副題も大げさすぎる。
地味な装丁も売れ行きに影響するだろう。
多くの小説家と作品を取り上げた価値ある本だと思うからこそ
編集者に一考を願いたいものだ。



※ 平成の文学とはなんだったのか 激流と無情を超えて
   重里徹也 助川幸逸郎 著  はるかぜ書房(’19.9)

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