コートールド美術館展 初秋の上野にて

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秋晴れの週日、「コートールド美術館展」を観るために都美術館を訪ねた。
コートールドという聞きなれない名称に、「魅惑の印象派」という副題。
「フォリー=ベルジェールのバー」がポスターになっていたので、マネの作品をたくさん観ることができるのだろう、といつの間にか私の期待はマネに絞られていた。
実際はそうではなかったのだが…

コートールド美術館というのは、実業家サミュエル・コートールドのコレクションをもとに設けられたロンドン大学附属コートールド美術研究所のギャラリーだそうだ。
印象派及び後期印象派の蒐集に定評が高いという。
今回、その美術館が修繕のため休館となり、収蔵品が貸し出されることになった。

サミュエル・コートールドはその祖先が17世紀に宗教的迫害を受けて、フランスからイギリスへ移ってきた一族で、絹織物業を営んだ。
それまでイギリスではあまり評価されていなかった印象派を蒐集したサミュエル・コートールドはレーヨンの生産によって莫大な富を築き、短期間で質の高いコレクションを形成したという。
印象派が大衆の嗜好にあうことに気づいた実業家の慧眼はさすがだ。

比較的小さなギャラリーで小品が多かったが、視点の工夫によって楽しい展示になっていたと思う。
何よりも、久しぶりに油彩の筆触の魅力に引きこまれた。
私と同行のNさんともども、ルノアールの「春、シャトゥー」に密かにため息をついていた。
緑色の濃淡と白だけのタブローがそもそも私たちの何を刺激したというのだろうか。
戸外の光を反映する春の野と木立という自然、それを写した点描の油絵具の筆致が、自然への賛仰をあらわしていたからだ。
よい絵とはその中に鑑賞者自身が参入したいと思わせるものだ。
文字通り引きこまれるのである。

11月というのに、桜の木はまだほとんど紅葉していなかった。
いつになく秋の遅い上野の森だった。


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クロード・モネ 秋の効果、アルジャントゥイユ(1873)

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この記事へのコメント

ワトソン
2019年11月09日 21:25
1685年に、ブルボン朝の最盛期のルイ14世が新教を禁止し、カトリックへの改宗を強要します。さらに、亡命も禁止しますが、商工業を営む人々20万人以上が、主にネーデルランドに逃げます。そのためフランスの国力が低下し、財政難から増税、革命の引き金になります。その後にイングランドの後塵を拝するようになる分水嶺でしょうか。
この美術展は、年初から注目していましたが、コートールドは、そのとき逃れた人とは知りませんでした。東京のあと、1月3日から名古屋に来ます。
2019年11月17日 18:08
ワトソンさん、ありがとうございます。
ナチスが政権をとって、優秀な科学者たちがアメリカに亡命した結果、ドイツ語ではなく英語が覇権を握ることになったという歴史的事実に似た話ですね。
松方コレクションもそうですが、財を成したディレッタントは美術品を蒐集したくなるもののようです。
散逸を防ぐ意味では価値ある行動だと思います。