読書日記

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岡本かの子は歌人、小説家として知られているが、世に出たのは最初、仏教研究家としてだった。
一平の浮気に苦しみ、夫を愛せなくなっていたかの子に対し、悔いる気持ちからか一平はかの子の文学的成就を支援しようと決心したようだ。
その総仕上げとして、一家はヨーロッパへと外遊する。
約3年の滞在の後、息子太郎をパリに残して、帰国したのは昭和7年(1932)。
折からの仏教ブームの波に乗り、かの子は引っ張りだこで多忙を極めたようだ。
本書が出版されたのは、昭和9年。
人生相談の体裁をとって、仏教の考え方に則り、人々を世俗的な苦悩から解放することを意図している。
自ら、苦しみ抜いて、救いを求め、求道した人らしく、語られる言葉は平易であり、少なくとも本書を手に取る読者なら、たちまち腑に落ちるはずだ。
経験者の言葉ゆえの説得力がある。
仏教は行動哲学である。
仏教が教える抽象的な言葉が現実の生活に即結びつき、精神の安定をもたらしてくれるだろう。
かの子が裁く神であるキリスト教に馴染めず、仏教に魅かれたのは当然の成り行きだった。
本書は極上のハウツー本である。

※ 仏教人生読本  岡本かの子 著  中公文庫(’01.7)


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岡本太郎の文才は定評のあるところだが、その渋滞のない、読みやすい文体は、口述筆記によるものと言われる。
岡本敏子さんというよき編集者、養女の存在が大きいと思う。
それにしても芸術論を述べる時の、滞りなさといい、用語の正確さといい、気迫といい、信念といい、一貫した姿勢が心地よい。
テレビでそのタレント性が受けて、逆に本来の芸術性が認識されていないような気もする。
何といっても、処世のために芸術を捻じ曲げる「卑しさ」を忌避し、創造者としてあくまで純粋性を求めた若さに脱帽するしかない。

※原色の呪文 現代の芸術精神
         岡本太郎 著  講談社文芸文庫(’16.2)

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描写の生々しさは、他の追随を許さぬものがある。
同時に、言語化されずに見逃されがちな風景を、思いもかけない比喩によって、非常に緻密に描く。
彼女の文学のテーマは一貫して「いのち」だった。
それも強く、若く、華やかな命である。
生命の量の違いということで、小説中の男女の関係は常に非対称であり、女の方が優位に立っている。
岡本かの子は意志的な肉食系女子の典型といえる。

※ 岡本かの子 ちくま日本文学 筑摩書房(’09.7)

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