「限界都市 あなたの街が蝕まれる」を読んで

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限界集落という言葉を聞くようになってから久しいが、次は限界都市である。
都市の人口構成は地方より遅れて老齢化するので、少子化人口減の時代において、都市も早晩、高齢化率が高くなり、住民が減少するのは避けられない。

それでも次々と再開発が行われ、タワーマンションが建てられるのは何故だろうか。
空き家問題に苦しむ自治体が、タワマンの建設に補助金を出す理由は何だろうか。
本書から、住民を増やして、税収を上げたい自治体の思惑と民間のディベロッパーの目先の利益優先が、百年の計であるべき環境問題を蝕む現状が明らかになる。
地方の首長ばかりか国の総理大臣でさえ、保身と一代限りの成果を求める国では、大局的な見地から大鉈を振るう様な、大胆な施策を実行できない。
国民の一人一人も大方は、まず自らの欲望に忠実に従うだろう。
都市への人口流入と一部地域での荒廃は、コンパクト・シティの美名の一方で、優柔不断な行政が不徹底な開発を許すことによって生じているものだ。

それに気づいていながらが、開発は止まらない。
将来の「廃墟」の現実は、不都合な未来が来るまで分からない。
この東急沿線では、武蔵小杉のタワマン乱立が問題視されてきたが、台風到来によって、いよいよ悪夢が現実となった。
停電によってエレベーターが停止した時、住民はどのように対処できたのだろうか。
そもそも歴史の浅いタワーマンションは、大規模修繕やメンテナンスのノウハウの蓄積がない。

一方、政治家には「建設族」や「道路族」はいるのに「都市族」はいない、と指摘されている。
明確な受益者のいるところに政治は動く。
何代も続けてようやく成果の上がる林業などが振るわないのと同じく、長いスパンで都市行政を考えるインセンティブが働かない。

若い世代にとって、もはや消費が快楽でないのは、物欲が無いのは、不快な未来を生きることになるかもしれないという予測ゆえだ。
とすれば、欲望全開の開発事業は一体、だれによって担われているのか。
誰ということなく、無責任な行政と市場の神の手が結託した結果なのだろう。

本書ではサービス付き高齢者住宅が乱立する現状についても紙数を割いている。
華々しい土木の成果から、地味な老朽インフラの修復へとシフトすべき時、技術はその方面で活かすことにならざるを得ないだろう。



※ 限界都市 あなたの街が蝕まれる
            日本経済新聞社 編(’19.2)

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