神楽坂にて

土曜日の昼下がり。
同窓同期の五人が、神楽坂の入口で落ち合った。
突然の電話に驚き、仲間に加わってからすでに数回、飲み会を重ねた。

この近くの大学でともに学んでから半世紀近くが経とうとしている。
45年と一口に言っても、人の一生の過半を占める。
それほど長い空白期を挟んでも、昔の面影は変わることがない。
髪が後退しようが、病気の話が出ようが、会えば瞬く間に青春と呼ばれる時代にもどってゆく。

不思議なことに、性格の変わらないのは驚くほどだ。
それぞれに経験を積んで、苦労を重ね、仕事の醍醐味も家庭の安寧も知っている。
人知れず心配事を抱えているかもしれないし、時に過去の手柄話も披露したいだろう。
不問に付された事柄は、阿吽の呼吸で察し合い、あえて言葉にされることもないが、45年という歳月は、それぞれの心身に膨大な皺を刻んでいるはずなのだ。

誤解があり、皮肉を言われることがあっても、その正直さが懐かしい。
運の分かれ道で幸運を手にする経験も、仕事の苦労も、私からみれば、眩しいように感じられる。
まだ土俵を下りず、現役を張る仲間には、合わせる顔もない。
と言いながら、実際こうして会っているのだから、それは少しあざといへりくだり、というものだろう。
肩の力の抜けた年代に至ったということだ。
何という遠い道だったことか…

同じクラスだった仲間が急死したことを聞いて、俄かに無常観にとりつかれたわけでもないが
焦燥感はじわじわと背骨を這い上ってくる。
時は過ぎ去り、逝く仲間も出てきた。

ひとしきり話した後、二次会へ行く仲間と別れた。
日はとっぷり暮れて、出勤する着物姿のお姐さん方とすれ違う。
こじゃれた店が増え、すっかり様変わりした神楽坂をひとり後にした。


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日本酒の品ぞろえがよいことと、魚の生きがいいので、集うのはここ、と決まったようだ。
最初に、鬼おろしにたっぷり釜揚げシラスを盛り上げたのが、出てくる。
これだけで日本酒がすすんでしまいそう。
カマスの刺身というのをはじめて頂きました。 どまん中 神楽坂店にて ’19.9.28