手づくり時計 増田精一郎さんのアトリエにて

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朝夕の涼しさ、虫の音、最後のエネルギーをふりしぼる蝉しぐれ、せっかちな街路樹の黄葉、季節を先取りした秋色ファッション、・・・etc.

詩人は「小さな秋見つけた」とつぶやく。

日本の気候も二季性への移行がいわれるようになったが、一年を24節気に分ける繊細な季節感を忘れたくない。
しぜん季節の変化に対して、私たちは鋭いアンテナを張り巡らす。

無防備な手の甲が日に焼けて夏の名残を留めている。
ふと腕時計のベルトの色を変えてみたくなった。
奇しくも、八ヶ岳倶楽部で買った腕時計の針が動きを止めた。
文字盤の裏に2017.7.14と刻まれているのを見れば、すでに二年の年月が経っているのだ。

「革ベルトのグリーンが欲しいのだけれど…」
在宅を確認した後、時計作家の増田精一郎さんのスタジオを訪ねた。
吉祥寺通をユニクロのところで中道通に折れ、大分行く。
通りの両側には、洋服屋さんや雑貨やアクセサリーの店など、個性的な個人商店が軒を連ねている。
行きつけの美容室では、吉祥寺で商売を成功させることができれば、どこでも通用するという。
それほどの激戦区だそうだ。
中には小さなお直しの店がひっそりと佇み、窓越しに熱心にミシンを踏む女性の姿がかいま見える。
ギャラリーも多く、またクラフトの町というイメージも強い。

セブンイレブンのところでという約束だったので、電話をすると横道からスマホをのぞきながら現れた人がどうやら増田さんらしい。
工房の様子を写真に撮らせて頂いたので、余計な説明は省く。
時間の概念を見えるかたちにした時計というツール。

まず、時という抽象に対する様々な想いがある。
ある人は哲学的な思索に誘われ、ある人は際限のない詩心を刺激される。
時計という、いうなれば冷たい機械が、そのデジタルな時を刻みながら、時を拘束し、老いを進める。
時と私という存在はどこでクロスするのだろうか…

増田氏は、この秋、10月24に日より八ヶ岳倶楽部に出品するという。
今夏は行き損ねたので、紅葉に彩られたギャラリーで、移ろう時を物質化した時計たちに会ってみたい。





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アトリエと店を兼ねたスタジオ


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清泉寮の新館を設計した人も顧客の一人だということだ。
デザインの原点には物語がある。

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時計作家である増田精一郎氏は「厚生労働省公認一級時計修理技能士」という厳めしい肩書を持っている。
腕時計の文字盤に数字のかわりに干支の文字を刻んだもの、文字盤のバーカウンターに並んだ洋酒の瓶は、樹脂ではなく金属を加工し彩色したものだそうだ。
器用なだけでなく
金属を腐食させてニュアンスを出したり、革ベルトにラメをあしらうなど、さまざまな材料の使い方に精通しておられる。
私の黒の革ベルトのラメはまるで銀河のようだ。
文字盤の腐食は夜空の神秘を小さな腕時計の中に閉じ込めたようだ。
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ヴィンテージものの時計 中古ではなく新品だそうだ
額縁の中は、時計を構成する小さな小さなパーツを集めたもの。

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スタジオの入口
もう終わりだという、桃葉桔梗の白い小さな花

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この記事へのコメント

ワトソン
2019年09月04日 09:48
来春に小学校に入る孫がいますが、小学校に入る前に、できるようにしておくことに、ひら仮名が読める、自分の名前を書けるなどと並んで、「時計が読めて、時間に合わせた行動ができる」とあるのに驚きました。なるほど、小学校は時間割により授業が行われ。下校とその後も時間に支配されます。習い事などがあれば必須ですね。
産業革命以後?、こうして人は時間に追われ、経済が発展して現在の社会があります。
2019年09月17日 17:26
ワトソンさん、ありがとうございます。
起きている時と寝ている時の違いくらいで、時間という観念に縛られなかった時代が懐かしいですね。