窓の想像力

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窓に切り取られた風景は、どこか懐かしい。
撮った瞬間に過去へと流れ去る宿命的な写真のように。
写真がいつもアングルを気にするように、窓からの風景は視界を限定する。

窓が風景に与える情趣はまた、心理的なものだ。
窓を媒介にして、守られた内側から、外界を眺める時、人はいつもより内向的に、そして内省的になるだろう。
風景はより一層、人間的な色あいを帯びてくる。
万葉人が自然現象に、人間の心情を重ねて見たように。

窓という、建築のディテールは、採光や通風以上に、心理的な機能を果たしているようだ。
視覚を変質させるまで、その効果は大きい。
「建築の開口部のうちで人間の出入りの用途に供しないもの」
という窓の定義がある。
出入りができないという身体的制限が、眼の隠喩としての窓の機能をより高めているような気がする。

窓をことのほか意識させたのが旧門司港ホテルだった。
カーテンのかわりに、鎧戸が内側に開くようになっていて、その緑色が懐古趣味をそそった。

ガラス窓の向こうは流れの速い関門海峡。
対岸に下関を望み、朝に夕に大型タンカーや貨物船が航行する。
右に源平合戦最後の主戦場である壇ノ浦、左手に宮本武蔵と佐々木小次郎が決闘した巌流島。
刻々と表情を変える海峡を眺めていて飽きることがない。
そして歴史を遡行し、見えないものを幻視する。




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以上、北九州市旧門司三井倶楽部


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以上、旧門司税関にて


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旧門司港ホテル ゲストルームよりの眺め            ’19.6