窓の想像力

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窓に切り取られた風景は、どこか懐かしい。
撮った瞬間に過去へと流れ去る宿命的な写真のように。
写真がいつもアングルを気にするように、窓からの風景は視界を限定する。

窓が風景に与える情趣はまた、心理的なものだ。
窓を媒介にして、守られた内側から、外界を眺める時、人はいつもより内向的に、そして内省的になるだろう。
風景はより一層、人間的な色あいを帯びてくる。
万葉人が自然現象に、人間の心情を重ねて見たように。

窓という、建築のディテールは、採光や通風以上に、心理的な機能を果たしているようだ。
視覚を変質させるまで、その効果は大きい。
「建築の開口部のうちで人間の出入りの用途に供しないもの」
という窓の定義がある。
出入りができないという身体的制限が、眼の隠喩としての窓の機能をより高めているような気がする。

窓をことのほか意識させたのが旧門司港ホテルだった。
カーテンのかわりに、鎧戸が内側に開くようになっていて、その緑色が懐古趣味をそそった。

ガラス窓の向こうは流れの速い関門海峡。
対岸に下関を望み、朝に夕に大型タンカーや貨物船が航行する。
右に源平合戦最後の主戦場である壇ノ浦、左手に宮本武蔵と佐々木小次郎が決闘した巌流島。
刻々と表情を変える海峡を眺めていて飽きることがない。
そして歴史を遡行し、見えないものを幻視する。




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以上、北九州市旧門司三井倶楽部


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以上、旧門司税関にて


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旧門司港ホテル ゲストルームよりの眺め            ’19.6

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この記事へのコメント

ワトソン
2019年08月15日 20:24
これを読んで、そうだそんなタイトルの映画があったな-と思い、「眺めの良い窓」で検索しましたが、映画は見つからず、眺めの良い窓の住宅を売り物にする建築会社が多くありました。宅地の立地が前提ですが、そういうニーズも当然あるのだと、あらためて認識しました。
映画はたしかにあった、と思い、タイトルを考えること数時間、窓ではなく部屋だと、思いつきました。ありました、「眺めのいい部屋」。1986年のイギリスの映画です。フィレンツェへの旅行で、ホテルの部屋からの眺めがよくないことへのクレームから話が始まるようです。アカデミー賞の脚色賞、衣装賞、美術賞の3部門を受賞しています。観ていないので、DVDを探します。
2019年08月31日 11:38
ワトソンさん、ありがとうございます。
「眺めのいい部屋」は、グランドツアーの映画として印象に残っています。
ヨーロッパの階級社会は根深く、とことん理解するのは難しい…
窓とは、いうなれば建物に穿たれた「穴」に過ぎないのに、様々な夢想や哲学的思索へと誘う”きっかけ”になりますね。
2019年08月31日 11:38
ワトソンさん、ありがとうございます。
「眺めのいい部屋」は、グランドツアーの映画として印象に残っています。
ヨーロッパの階級社会は根深く、とことん理解するのは難しい…
窓とは、いうなれば建物に穿たれた「穴」に過ぎないのに、様々な夢想や哲学的思索へと誘う”きっかけ”になりますね。
ワトソン
2019年09月03日 13:02
❝眺めのいい部屋❞ DVDの中古が安かったので買いました。まだ観ていません。
20世紀初頭の話ですね。まだその頃に、グランドツアーがあった、第一次世界大戦までは、イギリスの階級社会は確固としてあった、ということですね。
2019年09月17日 17:21
ワトソンさん、ありがとうございます。
ヨーロッパの階級社会は、日本人にはなかなか理解しがたいものがあるように感じます。
族長をルーツとする古いブルーブラッドの血筋と、成り上がりの日本の貴族とでは違いすぎますから。
2019年09月17日 17:21
ワトソンさん、ありがとうございます。
ヨーロッパの階級社会は、日本人にはなかなか理解しがたいものがあるように感じます。
族長をルーツとする古いブルーブラッドの血筋と、成り上がりの日本の貴族とでは違いすぎますから。