デフレの正体

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デフレはいつまで続くのか。
インフレが来ると不安を煽り、消費へと煽る向きもある。
本書は、消費が低迷し物価が下落する理由を、マクロ経済からではなく、人口動態から説明している。
「経済を動かしているのは、景気の波ではなくて人口の波で、つまり生産年齢人口=現役世代の数の増減だ」というのが要旨である。

海外旅行商品を買うのは中高年で、若者の留学は減っている。
物欲が無くなったと言えば聞こえはよいが、新卒でも就職できず、本来は消費意欲旺盛なはずの年代の可処分所得が減っているのだ。
一方、高齢者は過去の経済成長で着実に資産を増やし、年金生活も健康でさえあれば今のところ安泰だ。

先日、父親が有料老人ホームに入ったという友人から、86歳の父親が今までに受け取ったという年金の総額を聞いて、びっくりしたり、挙句改めて考えさせられることになった。
多額の遺産を使わぬまま(死蔵したまま)死んでゆく老人たち。
老人たちが購入したのは、「将来の医療福祉関連支出の先買い」、つまりコールオプション(デリバティブの一種)だという説明になるほどと思う。
先買いなのでもう他の消費には回らない。
家とか車などモノには十分に満たされていて、最後に不安なのは主に人件費からなる医療・介護などの高額商品だ。
消費は決して美徳ではない年代でもある。
冠婚葬祭なども地味に行うのが近頃の傾向だし…
生産人口である若者への所得移転はなかなか進まない。

本書は、経済が上向くためには、消費意欲も活発な、生産活動を行っている世代にお金が回っていくことが是非必要だという。
現在親の遺産を相続するのは平均67歳だとか。
相続者もすでに守りの姿勢に入っていて、金融資産はそのまま死蔵されることになる。
戦後最長といわれる好景気の間の2004~2007年に、大幅な所得増加が起こったが、消費は増えず、不況に転じた2008年に、金融資産の110兆円が目減りした。
その何割かでも消費に回っていれば、と今になれば思う。

前向きに考えれば、ピンチはイノベーションのためのチャンスでもある。
モノづくりだけに固執して、人件費の削減を行うのは、経済を益々縮小させるだけだという。
生産人口の激減はすぐ目前である。
本書で提案されている、来るべき時代への処方箋を信じたい。
死蔵された資産を有効に使う手立て、本当に必要としている人のところへお金が届くシステム。

どんな時代にも絶望的なペシミズムはあったと思うが、案外乗り越えてきたじゃないか…、とも思う。




※ デフレの正体  藻谷浩介 著  角川書店(’10.6)

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この記事へのコメント

2011年08月27日 19:57
今晩は。
頷きながら拝読いたしました。
>消費意欲も活発な、生産活動を行っている世代にお金が回っていくことが是非必要だ・・・実感しています。
遺産相続の年齢も納得です・・その年代はすでに消費意欲はなくなっています(笑)
また調ってしまっているので、必要としないんです(笑)
葬祭は特にここ数年の間に急速な変化を見ています。
自身もそんな考えを伝えるようになりました。
はてさて・・今年お別れした友人のように、多くの財産を教会に・・そんな決断も出来ず。。多くの財産があるわけでもなし(笑)
2011年08月27日 23:49
ウリ坊が新入社員だった頃は、先輩や上司との所得の差が大きかったですが、最近は、かなり狭まってきています。
ウリ坊達も、経済的に厳しい状況ですが、それでも、これから社会に出て行く人達よりは、幾分、ましかも知れません。
年々、状況が悪くなるなんて、悲しい国ですね。
2011年08月28日 18:44
やろいさん、ありがとうございます。
本書は、「消費のすすめ」でもあるのですが、誰かさんが言っていたのを思い出しました。
稼ぐに教養は要らないけれど、使う方には教養が要るって…
植草甚一という人は、モノの売っていない通りは歩く気がしない、と書いていたのを記憶しています。
ネット通販にはその楽しさはありませんね。
はてさて、環境も害さない、市場で人の絆を確認できる、楽しい消費って、何でしょうか?
2011年08月28日 18:52
ウリ坊さん、ありがとうございます。
空が新卒の頃は、理科系には技術手当があったり、男女格差がありました。
自分の方が仕事ができるのに何故?とばかりに、堂々と上司に談判した勇気ある女性がいました。
時代は変わりました。懐かしい思い出です。
所詮、お金は天下のまわりもの
ストックするよりフローさせることを心がけたい、とは思いますが…

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