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<<   作成日時 : 2017/08/02 22:41   >>

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「性」の視点から国家権力について語った本。
鈴木宗男事件にからみ逮捕・勾留(512日間)された経験のある佐藤優と、わいせつ物陳列罪に問われ逮捕されたことのある北原みのりとの対談集である。
「性」「国家権力」という、一冊の書物、それも新書の分量ではとうてい語るべくもない重いテーマについて、対談という、読者にとってとっつきやすいかたちで問題提起をしている。
本書は読書会の仲間であるSさんが薦めてくれたものだ。

対談者のお二人とも検察庁と警視庁の違い、逮捕・勾留期間の長短の差はあるものの、いずれも逮捕された経歴があるということで、国家権力の恐さを肌身に感じている。
本書では特に従軍慰安婦の問題に紙数が割かれており、慰安婦の経験した非人間的扱いが常人の想像をはるかに越えるものであると同様、経験した者でないと分からない深奥があることは逮捕拘留経験にまつわる二人の言葉によっても知られるところだ。
一個の孤立した人間には限られた力しかない。
それも貧相と呼べるほどのものに過ぎないだろう。
その一個の人間が国家権力を体現するとなると、ことは違ってくる。
そのパワーは増幅されることによってはかり知れないほど巨大化する。
国家という組織の力、人格を持たないシステムは怪物にもなりかねない。
特に非常時においては。
ヒトラー政権下のドイツを思い起こすまでもない。
オーソン・ウェルズはカフカ原作の「審判」を映画化し、人間の姿の見えない官僚組織の底知れない恐さを描いて慄然とさせた。

「性」という人間の衝動を国家がいかに利用し、コントロールするか。
婚姻についても一夫一婦制が自明でないことは、異文化の社会をみても歴史を考察してもすぐに分かることだ。
世界でも婚姻率の高かった日本は今日、非婚・少子化が憂慮されるようになった。
一夫一婦制が国家の戦略であることは確かだ。

本書を読んで、韓国人慰安婦を批判するような論調に組みするわけにはいかないことを改めて痛感させられた。
同じ経験をしたものでないと、その痛みと無念を同じ位相で感覚的に理解することは残念ながら不可能だ。
わからないなりにせめて、寄り添おうという姿勢を示すことしかできない。
その姿勢が元慰安婦の支援団体への拠出金10億円だったのか…

北原みのりは「表現の自由」という錦の御旗の下に暴力的な性表現がなされることにも反対している。
表現は誤読される危険をはらみ、人の嗜好と意識を変容させる。
だからといって最初から表現行為にタガをはめることには賛成しかねるのだが、「表現の自由」を守るためにこそ表現に先立つ原理原則を明確にして、リテラシーを鍛えることが必須だ。
表現に制限はないが、文化の名によってすべてが許されるわけではない。
文化の名に恥じない表現は、たぶん人の痛みを知ることによってのみなしとげられるものだろう。

また今日の日本で性の搾取が蔓延している現実をどう考えるか。
すぐ答えが出る問題ではないが、韓国人慰安婦の問題は当然そこへと帰着するのだ。
佐藤優の読書量と、いつもながら率直な北原みのりの発言に刺激を受ける一書となった。


↓オーソン・ウェルズによるカフカ原作「審判」





※ 性と国家  佐藤優 北原みのり  河出書房新社(’16.12)

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