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zoom RSS 魂でもいいから、そばにいて 

<<   作成日時 : 2017/05/26 21:58   >>

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読書会の効用のひとつに、ふだん自分のアンテナに触れず、縁がないままに終わるだろう本をたまたま手に取ることになる、という意外性の面白さがある。
私にとって本書は、そういった類の本だった。
まず題名と「霊体験」の一語に抵抗を覚えるのは私だけではないだろう。
大手出版社による刊行なので、きわものではないと思って読み始めた。

3.11という未曽有の大災害「東日本大震災」では、広範な津波によって肉親を連れ去られるという、およそ想像しうる別離のうちでも凄惨を極める体験をした人々が万単位で存在する。
一瞬にして穏やかな日常が悪夢のような非日常へと転換する。
本書は、突然断ち切られるようにして親や子、きょうだいとの永久の別れを余儀なくされた人々の、死者との不思議な邂逅を聞き書きしてまとめたノンフィクションである。

著者の念頭に柳田国男の「遠野物語」があったことは疑いえない。
東北という地の土俗性、霊的な感受性の強い土地柄と文化、その風土が、激甚災害に見舞われ、深い喪失感からなかなか立ち上がれないでいる人々の感覚の表層をいやが上にも鋭敏にした。
日常ではあり得ないことも、克服し難い哀しみのさなかにいる人には、まるで突然の天啓のように起こるのかもしれない。
だとしたらそれは癒しがたい魂の空隙を満たすために、人間に本来的に備わった自己治癒力ともいえるのではないだろうか。

死者が夢にあらわれることはよくあることだが
本書に登場する人々は、現実に科学的見地からは説明できない数々の「霊的」な体験をすることになったのだ。
此岸と彼岸の間には渡航不能な深い淵が横たわっているようにみえる。
しかし、死者と再会するために、生者はかそけき橋を渡し、すでに肉体を失った死者に触れ、その思いを受けとめる。
魂の底からの希求は、生死の境に通い路を見出すものらしい。
愛と呼ぶにはあまりにも根源的で、さらに生々しい。
抽象的な言葉を寄せつけない、分節化を拒否するような無意識の世界がひろがっているようだ。
東日本大震災は、科学的思考にとらわれた我々の硬直した世界観に疑念を生じさせた。

私たちはふだん様々なモノやコトに執着をもって生きている。
皮肉なことに東北大震災をきっかけに「絆」という言葉が誤用されてクローズアップされるようになったけれども、その絆あるいは軛が生者をこの地上につなぎ止めているのだろう。
地球より重いといわれる命。
それも近代の発明品に過ぎず、一個の命なんて、何だかとても儚いものに思われてしまう。
自立した個というのは幻想なのかもしれない。
ひとはもたれ合い、支え合って暮らしているのだ。
そんな当たり前のことに気づいたのが東日本大震災だった。

たまたま被災者にならずに済んだものにできることは、寄り添い思いを共有し、忘却しないことだけだ、と改めて思う。




※ 魂でもいいから、そばにいて 3.11後の霊体験を聞く
                奥野修司 著  新潮社(’17.2)

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
人間は人間自身を知りえないのです。
現代の科学、医学で証明できないだけで、霊的体験といわれるものはあるのだと、私は思います。
私が現在読んでいる、戦前にアメリカで書かれた、
アレックス・カレルの”MAN,THE UNKNOWN" 訳:渡部昇一 「人間この未知なるもの」。
著者はフランスで医者でした。しかし、その体験を公にしたことで、医者でいられなくなり、アメリカへ行きます。
聖書でイエスが、触れるだけで、立てない人が歩けるようになったり、目が見えない人が見えるようになったことが述べられていますが、彼は医者として、治る望みのない患者に付き添ってそういう人のところへ行き、たちまち快癒することを目撃します。それを発表します。
アメリカで職を得て、これを著作します。
そういうことでは、アメリカの社会は健全だと思います。トランプの思うようにはならないでしょう。
ワトソン
2017/05/27 20:47
ワトソンさん、ありがとうございます。
空は霊感が強いとは言い難いので、不思議体験は残念ながらあまりしたことがありません。
これこそ「正夢」になるかも、と思った夢でも、実際に予言的夢であったためしがありません。
けれど、現代の科学が広く宇宙の事象をすべて合理的に説明し尽せているわけではないので、まだまだ人間にとっての神秘の世界は広大だと思います。
いつか我々の科学が小さな世界をつまつまと秩序立てようとする特殊な言語体系に過ぎない、と言われる時代がくるかもしれませんね。

2017/05/30 21:55

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