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zoom RSS 上野千鶴子著「<おんな>の思想」を読む

<<   作成日時 : 2017/05/16 16:52   >>

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フェミニズムは20世紀をゆるがす
思想と実践だった
21世紀の今日
フェミニズムは賞味期限をすぎただろうか?

上記の問いに応えるべく、フェミニストとして論考を展開してきた社会学者・上野千鶴子によって書かれたのが本書である。
私がはじめてフェミニストの著作にふれたのは、高校一年の時。
言わずと知れたシモーヌ・ド・ボーヴォワールの「第二の性」だった。
人は女に生まれない、女になるのだ
冒頭の有名な一節に衝撃を受けたのを昨日のことのように思い出す。
正直言って高校一年の少女がその言葉の意味を正確に理解していたとは言い難い。
まだ言語哲学も知らず、ボーヴォワールのパートナーだったサルトルの実存主義哲学の方に視線が向いていたからだ。
フェミニズムを女権拡張論と訳し、政治的な権利取得を男並みに求める立場、と狭い意味に解釈しがちだったように思う。

「第二の性」はもはや古典であり、その頃から考えるとフェミニズムそのものがはるかに遠くに来てしまったという感慨を強くした。
本書は主にフェミニズム、女性史の立場で書かれた書物を取り上げ、上野千鶴子がその読書体験について述べ、注釈を加えるというものだ。
門外漢が女性史を概観するには絶好の書物かもしれない。

日本人の著作と翻訳ものの2部構成になっていて、ミッシェル・フーコーはじめ海外の理詰めに展開される知の世界は圧倒的で、日本人による肉声に近い生々しい著述と相まって、
女性史にリアルと奥行を与えている。
女性であれば自らの体験に照らし合わせ、生き難さや社会に対する憤懣や釈然としない慣行に思い当り、明晰に言語化してみせてくれた書き手たちに喝采を送りたくなるだろう。

私が最も共感を覚えた著作は、イヴ・セジウィックの『男同士の絆―イギリス文学とホモソーシャルな欲望』
ホモセクシャルに並べてホモソーシャルという概念を導入し、男社会に潜む同性愛恐怖と女性嫌悪を指摘することによって、男社会がどのように機能し、女に対して覇権を握ってきたかを説明している。
セクハラに対して自覚的、神経質な今日と比べて、男女雇用機会均等法施行以前はセクハラの無法地帯だったと、今になってようやく納得できる。
当時はそういうものだと思って諦めていたふしがあるが、それがじわじわと女をスポイルしていたのだ。
男女がいかに親密な恋愛関係にあろうとも、さらに上位の関係を男同士は取り結んでいる。
その疎外感が無意識のうちに若い女性を苦しめてきたと思う。
俗っぽい表現を使うと「嫉妬」である。
緊密な絆によって構築され、女をつんぼ桟敷に追いやる男社会に対する…
仕事上では男並みを求められ、私生活では女を要求される。
首尾一貫性のないアイデンティティーが女自身の自己評価を下げる一因にもなってきた。

ボーヴォワールの時代からあまりにも遠くへやって来て、〈女〉はすっかり解体されてしまったかのようにみえる。
さらに進んでフェミニズムそのものに無効が宣言されそうな勢いである(ジュディス・バトラーによるセックス・ジェンダー二元論の解体)
男と女のフィクションが暴かれた後の荒野から、今度はどのような物語を紡ぐことができるのだろうか…




※ 〈おんな〉の思想 私たちは、あなたを忘れない  上野千鶴子 著
                          集英社文庫(’16.6)

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
イヴ・セジウィックの『男同士の絆―イギリス文学とホモソーシャルな欲望』に興味を持ったので、図書館で借りて読みました。しかし、この著作の内容以前に、著作の手法に疑問を持ちました。著者のイヴ・セジウィックは、ニューヨーク市立大学の英文学の教授です(女)。この著作は、英文学つまりフィクションから、男同士の絆を歴史的に考察しています。シェークスピアなどの文学に書かれたことをもとに、文学論ではなくイギリス社会の、男同士のつながりを論じています。つまり、フィクションの上に、論理を構築しています。こんな方法で現実を分析できるのでしょうか?大いに疑問を感じました。但し、内容は的を得ていて、納得させられました。
そこで気が付きました、「菊と刀」の著者に近い手法ですね。「菊と刀」も、書物(文学だけではない)で、これだけ鋭く的確な日本の社会や慣習の分析ができるものだと、感心させられました。どちらもアメリカの女性の著作です。
ワトソン
2017/05/23 22:30
ワトソンさん、ありがとうございます。
文学は、現実の社会を映し出す鏡としての側面があるので、そのような分析手法が有効と思われます。
フィクションがドキュメント以上に現実の痛烈な批評となる例は数知れず。
芸術が自然を模倣すると同時に自然が芸術を模倣するという見方からすれば、強力な分析手段と言えるかもしれません。

2017/05/26 22:12

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