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zoom RSS 国谷裕子著「キャスターという仕事」を読んで

<<   作成日時 : 2017/04/30 10:51   >>

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午後7時半という時間に生番組として放送されていた「クローズアップ現代」が2015年、夜10時に移行し、国谷裕子キャスターは降板した。
国谷さんはNHKの職員ではないため、契約は1年ないし3年で更新されていたという。
現場では当然2016年も続投と思われていたらしい。
本書には時間帯やキャスターの変更の理由について具体的には触れられていない。
国谷さんの「切込み型」とも言われるインタビューを人によっては不快と感じる向きもあっただろう。
しかしアメリカなどでは攻撃的インタビューがふつうらしい。
「聞くことは聞く」
いつも視聴者の側に立って、キャスターとして伝えるべきはきちんと伝えたい。
夕食時でもあるし7時のニュースに続けて放送される番組であることを考えるとその影響ははかり知れない。
特に昨今ジャーナリズムの現場で「空気を読む」事なかれ主義が蔓延していることは劇作家の永井愛も「ザ・空気」で痛烈な風刺・批評を展開した。
必ずしも直接圧力を受けたわけでもないのに、現場の人間がその雰囲気を先取りして、手厳しい正論になってしまうことを避ける傾向がある。
23年間にわたり、「クローズアップ現代」は3784本放送されている。
毎回テーマが違うため、番組の制作者の担当は変わっても国谷さんは出ずっぱりだ。
読み込まなくてはならない資料の膨大さ、制作途上の現場にも立ち会い意見を述べる。
本書を読むと、正味30分未満という枠の中で、何をいかに正確に伝えていくかの難しさに苦渋したキャスターの姿が見えてくる。
テレビの性格上分かりやすさを優先するあまり予め作られたシナリオ通りに進行してしまいがちだという。
ところが現実の出来事はもっと複雑なのだ、とキャスターは考える。
素材をできる限り公平に選び、正確に提供し、あとは視聴者の判断に任せるのがジャーナリズムの正道だろう。
そこで問題となるのが同調圧力だ。
国谷さんは、映像の強烈なインパクトに対抗して、あえて言葉の力を信頼し、言葉でもって真実に肉迫しようとした。
完膚なき映像の証言性は、切り取られた一部の現実に収斂していってしまう。
言葉も、一旦事象を名づける言葉が流通し始めると、人々に一定の観念、善悪のものさしを与えてしまう危険性をはらんでいる。

7時半からの「クローズアップ現代」が、エンタメ系の番組にとってかわられた。
視聴者はその方が気楽でいいかもしれないが、何か物足りない。
いつかその気楽さに慣れてしまうのも怖い。
テレビという媒体が、為政者にとってさらにコントロールしやすい、同調圧力に屈しやすい傾向を生むことにつながる。
ゲスト出演者に厳しい眼差しを向けながら、終了時間ぎりぎりまで質問しようとする国谷キャスターが今とても懐かしい。



※ キャスターという仕事  国谷裕子 著  岩波新書(’17.1)

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
あまり(というよりほとんど)NHKは見ないのですが、「クローズアップ現代」は何回か見たことがあります。
国谷さんはNHKの職員では無かったのですか。全く知りませんでした。バラエティ等と異なり、まじめな造りの番組では、必要となる勉強量も膨大だったのですね。
しばらく充電して、また、戻ってこられるのでしょうか。
ウリ坊
2017/05/03 19:08
ウリ坊さん、ありがとうございます。
正味30分以下という枠で、よくも毎日異なるテーマを取り上げたものだと思いました。
国谷裕子さんはまずキャスターとして認められたかったと告白していますが、視聴者ファースト、弱者ファーストで、ジャーナリズムの本道を誠実に歩まれたことに改めて敬服させられました。

2017/05/04 17:20
空さま
相変わらず日本各地を歩かれていますね。 同じ本を読んだ私の感想を
http://hakuzou.at.webry.info/201706/article_9.html
に載せました。 宜しければ覗いてください。


http://hakuzou.at.webry.info/201706/article_9.html
白象
2017/06/29 07:15
白象さん、ありがとうございます。
早速、拝見いたします。

2017/07/01 23:48

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