風を待ちながら・・・

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zoom RSS 糸魚川の大火 母の記憶から

<<   作成日時 : 2016/12/25 22:40   >>

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22日、糸魚川で大火災が発生したという報を受けて、テレビにくぎ付けになった。
まるで山火事のような、未曽有の都市大火災となった。
たださえショッキングな映像だった上、私にとって父母の実家があった土地なのでなおさらのこと、知り合いの安否が気にかかりで、胸の高鳴りを抑えることができなかった。
親戚に連絡をとった母の伝聞から、叔母の家が無事だということは確認した。
火元から10mほどのところだが、風上にあったため被災を免れた。
ひとまず助かって良かった、と手放しで言えないのは、甚大な被害に呆然と佇む夥しい人々がいるからだ。
この寒空に焼け出された絶望や不安はいかばかりかと思う。

糸魚川というところは強風、それも複雑な風の吹くところで、火事が多い。
私もことにつけ母から火災の思い出を聞かされている。
来年90歳を迎える母が小学校低学年の頃のことだから昭和10年以前に遡ると思う。
幼かった母はランドセルを背負ってマントを着込み、靴を履いて囲炉裏の前で待機していた。
その時も火元は本町通り近くだったらしい。

半鐘の音を耳にすると、いちはやく家内の建具が取り払われ、土蔵に納められる。
火災に備え、土蔵の1階はいつも空にしておく決まりだったそうだ。
藏の内壁に建具を立てかけて綱を張って固定する。
次に建具同様に外された畳をその前に積み上げる。
すべてを土蔵に収納してしまうので、屋内はほとんど何も残されない状態になるらしい。
藏の1階をがらんどうにしておくために、什器類、家具などはもとより、来客用の布団もその度に上げ下ろししたものだという。
土蔵の扉を閉め、二階の高窓にも施錠すると、一家の主婦は蔵の外壁に設けられた足場をよじのぼって、窓の隙間に味噌を詰める。
炎が入らないように密封するのだ。
火事場の馬鹿力とはよく言ったもので、ふだんは足がすくみそうな高所に非力な女が上ってしまうのだからすごい。
母の実家は商家だったので、新入りの小僧さんやねえやが来ると、まず火の始末の注意からはじまり、火事の時の対処の仕方を教えたそうだ。

次の火事の記憶は戦後のことになる。
翌日に法事をひかえ、祖母は深夜、豆腐をつくるために石臼で大豆を挽いていたそうだ。
山から吹いてくる風のうなりを聞き
「嫌な風だ」と思ったという。
間もなく風の向きが変わって、石臼からふと目を上げると、通り庭の先、国道に面したガラス戸一面が真っ赤になっている。
火元となったのは向いの蒲鉾やの地下室だった。
火をつけるためのもみ殻がぎっしりつめこまれている穴蔵だ。
その時も幸いなことに風向きが変わって助かっている。

糸魚川の叔父が、東京の火災保険料の安さに驚いたという話を思い出した。
それほど糸魚川の火災保険料は高いのだ。

糸魚川は北国街道と千国街道の交点になり、江戸時代は宿場町として栄えた。
芸者の多い町で、母は子供の頃、友達の置屋に出かけては、美しい着物を着付ける芸者さんを眺めてはうっとりしたものだという。
今度の大火災でも母の幼なじみの旅館が全焼している。
糸魚川でも一番の豪壮な建築を誇る「平安堂旅館」である。
火災のあとは悲惨なものだ。
生まれ育った家には命がある。
家を喪った被災者が一日も早く立ち直られることを祈らずにはいられない。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
叔母様・・・不幸中の幸いでしたね。
でも、焼け出された方は、どんなにおつらいことかと思います。
お金で買い直せる物は別として、アルバムとか、思い出の品とか・・・そう言う物を持たずに生きていくのは寂しいです。
ウリ坊
2016/12/31 23:29
ウリ坊さん、ありがとうございます。
わが市にも3.11で避難して来られた方がいます。
家ごとごっそりと津波にさらわれてしまった喪失感は想像する以上だと思いました。
断捨離とは言いますが、モノによって豊かになる精神生活が確実にありますから…

2017/01/01 18:43

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