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zoom RSS 蒼の詩 永遠の乙女たち 東郷青児

<<   作成日時 : 2009/11/29 14:59   >>

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年とともに、芸術作品と呼ばれるものに、インスパイされることより、癒されることを望むようになってきている。
興奮はいつか冷めるが、深く満たされた感情は記憶され、持続する。
題材そのものが日常のごくありふれた平安やくつろぎをテーマにしていて、それに魅かれることもあり
一方、この世の摂理からはみ出しているような幻想も、あり得ないがゆえに、日常の逃避場所として確保しておきたい思いにとらわれる。

東郷青児の作品は後者の方である。
青ざめた美少女たちは決してこの世のものではない。
東郷青児自身は、女を描くと少女的な顔になってしまうことの理由として
「人間的な欲望の少しもないような表情」が少女に似るのではないか、と答えている。
彼にとって純粋な少女とは「空想と哀愁を心の糧にしている」。

そんな抽象的な女たちの肖像が昭和という一世を風靡した。
青児の絵がことさら好きなわけでもないのに、胸をキュンとさせる何かがあるとすれば、それは昭和という時代に対するノスタルジーなのかもしれない。
物質的に今よりはるかに乏しかった頃、青児は分かりやすい芸術を目指して、美の大衆化を企図した。
モダンでありながら抒情的な雰囲気があるのは、竹久夢二の下絵描きをしていたという経歴からも首肯される。
画業だけではなく、デザイン万般にわたって活躍するマルチな才能に恵まれていたことも夢二と共通している。
また、ジャン・コクトーの「怖るべき子供たち」は、装丁・挿画はもちろんのこと、翻訳も手がけ、ゴーストライターが翻訳したのではないか噂されたほどの名訳として知られている。

女性遍歴も華やかで、青児の心中未遂事件を取材に行った宇野千代と、その日から同棲生活に入っている。
日本初のファッション誌「スタイル」を宇野千代とともに創刊したことは有名だ。
青児からの聞書きをもとに書かれた「色ざんげ」は宇野千代の作品中でも最高傑作とされている。

最晩年にはモロッコに出かけ、「あと十歳若かったら、砂漠に消えてしまいたい」と語っていたそうだ。
パリ時代末期にはラファエロやボッティチェリに傾倒し、コマーシャリズムの世界で活躍した画家も、ついに永住の住処を、原始的で不変な世界に求めたのだ。
それを思えばこそ、商業的な成功が儚く感じられる同時に、儚いゆえに絵のフォルムも質感も色彩も愛おしいものとして郷愁という宝箱に仕舞われる。

東郷青児の絵は、現在西新宿の損保ジャパン本社ビル42階の「損保ジャパン東郷青児美術館」で観ることができる。
企画展はよく観に行ったものだが、青児の絵はあまり記憶にない。
生活雑貨となった青児の意匠がいつの間にか刷り込まれて、空気のようになっているのが青児のデザインだったのだろう。




※ 東郷青児 蒼の詩 永遠の乙女たち
               野崎泉著 河出書房新社(’09.1)

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは!
また寒い日が・・・。
>東郷青児     中学生くらいの頃でしょうか、東郷青児・伊東深水・杉山寧といった画家がやたらニュースになっていた時期がありましたね。丁度絵に興味を持ち始めた頃でしたが、三人のうちで一番関心を持ったのが杉山寧で、東郷青児は何故この絵が良いのか分かりませんでした。
この時期にこの三人が露出量が多かったのは、絵だけでなく、それぞれのお嬢さんが話題になったということもあるんでしょうか?
東郷青児さんのお嬢さんが東郷たまみ、伊東深水さんのところは朝丘雪路、杉山さんのところは三島由紀夫と結婚。
まだワイドショーがなかった頃?ですが、私でも知っているくらいですからけっこう世間を賑わしていたんでしょうね。
>青児の絵がことさら好きなわけでもないのに、胸をキュンとさせる何かがあるとすれば、それは昭和という時代に対するノスタルジーなのかもしれない。
そうですね。絵画に限らず、同時代には何とも感じなかった作品に懐かしさを感じるのはそんな気分が大きいのかも知れません。納得です。
midy
2009/11/30 12:12
今日は。
何だか懐かしい・・と言うよりなんだろう!
独特の人物像・・・もう染み付いているって感じです。
直ぐに引き出しから出せるっ感じ・・
好きでもなし!ああああまた青児・・ってな感覚でした
勿体無いですね・・・叱られそう・・それほど私には必要としなかった(笑)
>宇野千代と、その日から同棲生活に・・
今の世だったら・・・何ヶ月テレビで賑わうことでしょう
桜と結びつきますが宇野千代さん・・容姿からは???
そういえば若かりし頃の写真の姿・・・竹久夢二の
立ち姿に似ていますよね。(笑)
やろい
2009/11/30 14:01
midyさん、ありがとうございます。
東郷たまみはやはり画家になって、この本の中で父・青児について語っています。
絵柄に好き嫌いはあっても、洋菓子店の包装紙などではお馴染み。商業芸術の方が目に触れる機会が多いだけ、影響力も大きいようです。

2009/12/01 22:04
やろいさん、ありがとうございます。
やはり青児は好き嫌いが分かれるようですね。
恋多き人でしたけれど、描く女性像にはどこか愛妻(みつこ)夫人の面影があったとか。
たまみさんの話では、青児が死んでからは盈子夫人も生きることをやめ、青児の死後約一年で亡くなっています。

2009/12/01 22:18

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